2008年11月05日

年金制度改革を含めた社会保障機能強化に必要なもの

政府の社会保障国民会議(座長・吉川洋東大教授)が、社会保障制度の機能強化に向けた財源に関する最終報告をまとめました。
 少子高齢化に伴い、医療・介護費用の追加費用が2015年で4兆円、2025年には14兆円と急激に増加することが数値ではっきりと示されましたが、年金制度存続に関する費用も例外ではありません。

現行の社会保険方式の年金制度を存続の場合の追加費用が、2015年で2.6兆円、2025年で2.9兆円となっています。
これとは別に、基礎年金の国庫負担を1/2に引き上げるために、消費税1%分の追加費用が必要となります。
一方、全額税方式の年金制度を採用した場合、2015年度の追加費用が基礎年金だけで12兆〜28兆円、2025年には15〜31兆円に達すると見積もられています。
医療・介護等、他の社会保障を含めた強化財源費用を消費税率に換算すると、2015年度で社会保険方式維持の場合が3・3〜3・5%、「税方式」に切り替えた場合が6〜11%の上昇、2025年度で社会保険方式維持の場合が6%程度、「税方式」に切り替えた場合が9〜13%の上昇となっています。
最大で計算すると、社会保険方式の年金制度を維持した場合の消費税が11%なのに対し、全額税方式に変更した場合は18%まで上がることになります。
食料品等の生活必需品が、18%もの消費税率になったら国民生活の混乱は必至です。
欧州各国は、通常品には20%前後の消費税をかけるものの、食料品等の生活必需品には一ケタ台の消費税を設定する複数税率制が一般的です。
年金制度を始めとした社会保障強化策として、社会保障国民会議が具体的な試算結果を発表するのであれば、複数税率の検討もあって然るべきです。
スウェーデンやノルウェー等の北欧諸国が、手厚い福祉医療サービスの代替として食料品等にも2ケタの消費税率を採用しているのに対し、麻生内閣が中福祉、中負担を目指すのであれば、それに適した税率設定を考えるべきです。

今回、7年及び17年後の財源が提示されましたが、麻生内閣は景気が回復するまでの3年間、消費税の引き上げを行わないとしています。
その一方で、基礎年金の国庫負担を1/2に引き上げは既定の事実となっていますが、来年度の財源のメドはついていません。
また、行財政のムダ削減に向けた取り組みも、掛け声ばかりで一向に具体化されません。
社会保険方式の年金制度を維持するのか全額税方式に移行するのかといった議論の前に、麻生内閣がクリアすべき課題は、山のようにあります。


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posted by 年金情報館 at 22:46 | Comment(17) | TrackBack(0) | 社会保障給付費

2008年10月10日

年金制度改革計画を吹き飛ばしかねない厚生年金記録改ざん問題

宙に浮いた年金記録問題が十分に解決しないまま始まった「ねんきん特別便」の発送がほぼ終わりに近づいたところで、年金にまつわる様々な動きが出てきました。
まず先月29日、厚生労働省が社会保障審議会年金部会で、年金制度改革の原案を正式に発表しました。
主な内容は以下の通りでした。
A.基礎年金を受給するために必要な加入期間を25年から10年程度に短縮する。
B.未納だった年金保険料を遡って支払える納付期限を、現行の2年から5〜10年程度に延長する。
C.育児休業期間中の保険料免除を、会社員等の厚生年金加入者から国民年金加入者まで拡大する。
D.年金受給者となっても、収入がある場合に年金の一部を減額する「在職老齢年金制度」の減額割合を緩和する。
E.年金保険料免除となる低所得者層の税負担割合を増やし、将来受け取る年金額を増やす。
F.国民年金の加入期間を、現在の「20歳から60歳」から、大学卒業後の「25〜65歳」にシフトさせる。

Aの年金受給資格の短縮やBの年金保険料納付期間の延長は、本来受給すべき年金の発生を促すだけに、早急な導入が期待される改革です。
また、Fの年金加入期間のシフトも、学生等の収入を得る手段の乏しい20歳からより、保険料を支払う環境の整った25歳からのほうが望ましいと感じます。
一方、子育て世代の国民年金加入者の保険料免除や、高齢者の就労を促す在職老齢年金の制限緩和、低所得者層が将来受給する年金額のサポートは、いずれも重要な政策ながら財源が必要になります。
どの順番でいつ実施するのか、政府は明確な導入プログラムの作成を示さなければなりません。


ただ、年金制度の改革機運に冷や水を浴びせかねない事態が発生しています。
厚生労働省はこれまで、社会保険庁のオンラインシステムで管理されている1億5000万件の厚生年金記録の中で(1)加入者の月収の記録である「標準報酬月額」(9万8000円〜62万円までの30等級)を引き下げる処理と、加入者を年金制度から脱退させる処理が、同日かその翌日に行われている、(2)標準報酬月額が5等級以上引き下げられている、(3)6か月以上さかのぼって後から標準報酬月額が引き下げられている、3条件すべてに該当する6万9000件が改ざんの疑いが濃いと説明してきました。
しかし舛添厚生労働相が3日、3つの条件を全部満たしていなくても改ざんの可能性があることを明言しました。
通常の感覚で言えば、最初からどれか一つでも該当している方が改ざんの疑いがあると考えるのが自然です。
それぞれの条件に該当する件数は(1)15万6000件(2)75万件(3)53万3000件で、延べ143万9000件に達します。
重複部分は差し引く必要がありますが、100万件超の厚生年金記録改ざんが行われた可能性が、極めて高いと言わざるを得ません。
また、今回の結果も、あくまでオンライン上の数字に過ぎません。
オンライン化されていない昭和61年以前の厚生年金記録はカウントされておらず、本当の改ざん記録件数は予測不可能な状態にあります。
厚生労働省は、大臣直属の調査チーム「標準報酬遡及(そきゅう)訂正事案等に関する調査委員会」の立ち上げを公表しましたが、底なしの様相を呈している「厚生年金改ざん記録」にどこまで切り込めるかは不透明です。


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posted by 年金情報館 at 22:42 | Comment(0) | TrackBack(4) | 年金着服問題

2008年09月12日

「宙に浮いた年金」「消えた年金」に続く「消された年金」

社会保険庁が9月9日に「年金記録問題に関する関係閣僚会議」にて厚生年金の標準報酬月額などの改ざんに関する調査結果を公表し、社会保険事務所職員が改ざんにかかわった事例が1件あったことを明らかにしました。
これまで、事業所の厚生年金保険からの脱退(国民年金への移行)や標準報酬月額申請の減額は、全て事業主側によるものとした社会保険庁が、初めて職員の関与を認めた形です。
社会保険庁は、年金記録改ざんに関わった職員を懲戒処分する方針です。

しかしながら、今回調査が実施されたのは年金記録確認第三者委員会が今年2月末までに年金記録改ざんを認めた16件と、社会保険事務所の指導で標準報酬月額の減額を実施したと証言した設計コンサルタント社長のケースの計17件のみです。
そして、改ざんへの関与が認められたのは、筆跡記録から明確な証拠があったコンサルタント会社社長のケースだけとなっています。

実際に行われた年金記録改ざんに対する調査は、社会保険庁内の身内による聞き取り調査がほとんどのようです。
古い事案が多く、事業主へのヒアリングが出来ない、証言が十分に集められない等を関与が認められなかった原因と社会保険庁は釈明していますが、関与の有無の聞き取りは自己申告で行われていました。
これでは厳格な聞き取りが出来るはずもなく、社会保険庁の変わらない体質が改めて浮き彫りになった形で、日本年金機構への移行にも影響を与える可能性があります。
厚生労働省の江利川毅事務次官が内部調査の限界を認め、弁護士ら第三者を入れて調査することを示唆していますが、なぜ当初からそのような方策が検討されなかったのか疑問の残るところです。


年金記録問題は、オンライン(コンピューター)上にありながら誰のものか分からなくなっている「宙に浮いた年金記録」に端を発し、受給者本人が年金保険料納付の証拠を持っていながら、記録が脱落している(原因不明)の「消えた年金記録」に続き、社会保険事務所職員や事業主の着服による「消された年金記録」へと拡大しています。
今回、社会保険庁が関与を認めた「消された年金記録」は、年金記録確認第三者委員会が認定した記録の改ざんが現時点で56件まで増え、今後さらに増えるのは確実です。
政府は、年金受給者への標準報酬月額の通知を2009年中に、現役世代にも同じく2009年度から配布開始予定の「ねんきん定期便」に標準報酬月額を掲載して注意を呼びかけるとしています。
しかしながら今回の結果公表はまさしく氷山の一角だけに、ポスト福田内閣の新政権には、迅速かつこれまで以上に丁寧な対応が要求されます。



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posted by 年金情報館 at 21:02 | Comment(0) | TrackBack(1) | 年金納付記録